【ATC(BOC公認アスレティックトレーナー)】が何たるかを知るために一番いい方法は、ATCがどのように作られるか=つまりその教育カリキュラムを知るのが一番です。

アスレティックトレーナー→トレーナー=トレーニングメソッドとかを習っているのでは?というイメージを持っていた方なら、ちょっと驚かれるかもしれません。
そこで今回の記事では、アメリカでアスレティックトレーナーの勉強をする学生が、どんな授業を受けて国家試験に望むのかをご紹介します。
なお、これは一つの例であり、また時代とともにどんどん内容はアップデートされていくものである、ということはご了承ください。

写真引用:Bridgewater State University Athletic Training Program
ATCになるための学校
CAATEという教育機関に認定されたプログラムをもつ大学だけが、Certified Athletic Trainer(ATC)を育てるカリキュラムを運営でき、そのカリキュラムを修了後に生徒はBOC(国家試験)の受験資格を与えられます。
2018年現在、アメリカでアスレティックトレーナーになるためには最低でも学士号取得、つまり4年制の学部のカリキュラムか、2年制の修士課程のカリキュラムを卒業するかどちらかしか方法がありません。
※追記:今後はすべてのカリキュラムが修士課程に完全移行することが正式に発表されています。
少なくとも大学で勉強することが必須ということですね。
学部の4年間・院の2年間それぞれで学ぶメリットデメリットもありますが、それについてはまた別の記事で取り上げたいと思います。
ではそのカリキュラムで生徒は、どんな授業を受けるのでしょうか?
今回は私の母校である、マサチューセッツ州にあるブリッジウォーター州立大学(通称BSU)の大学院(2年間)を例に、アメリカのアスレティックトレーニング教育について紹介します。

↑ATプログラムの授業があるティンズリー・センターの前にいる、
威風堂々としたスクールマスコットのベアー。
この銅像にまたがって写真撮ったりしたら怒られる。
写真引用:Bridgewater State University Athletic Training Program
BSUの修士のカリキュラムの例
こちらのBSUのアスレティックトレーニングプログラムのウェブサイトから、授業計画が見れます。
2018年現在、BSUのアスレティックトレーニング専攻の大学院生が受ける授業のすべてがこれです☟

わかりにく!笑
というわけで、セメスターごとに見てみましょう。
ちなみに、修士課程はたったの2年間なので、アスレティックトレーニングの教育過程に進む前に基礎的な知識はすでにあることが前提です。
「解剖生理学」「バイオメカニクス」「テーピング」「応急処置」などの単位を取得していることが、修士のプログラムに入学するための必須条件となっていました。
これが4年の学部のカリキュラムになると、1〜2年次にこれらの基礎的な授業を履修し、3〜4年の高学年になってからより専門的な授業を履修する、というパターンがほとんどです。
ちなみに、久しぶりにプログラムのサイトを見て驚いたのですが、現在の内容は私が在籍していた2014〜2016年のカリキュラムとは結構違います。
まだ2年しか経ってないのに・・・!
アメリカの教育プログラムはどんどん改良・変更をしていくので、スタンダードがどんどん変わっていく業界に合わせて教授陣もどんどんカリキュラムを変更しているのでしょう。スピード感が半端ないです。当たり前ですが先輩から過去問もらって〜とかやってる場合じゃありません!
1年目の授業
現在は①夏学期(前半・後半)②秋学期 ③春学期の3セメスター制になっています。
私の時は秋と春だけの2セメスター制だったので、今はみっちり授業があって忙しいですね。
私の頃は、夏は授業がない代わりにインターンを探してプライベートの実習のようなことをしていました。
授業のタイトルの日本語訳は私作なので若干ニュアンスは違うかもしれません。元々の名前が気になる方は上の表から探してみてくださいね。
夏学期[前半]
研究方法
機能解剖学の応用
夏学期[後半]
顔面、頸部、脊椎傷害のマネジメント
アスレティックトレーニング実習 レベル1
秋学期
下肢傷害のマネジメント
物理療法
アスレティックトレーニング実習 レベル2
春学期
上肢傷害のマネジメント
運動療法
一般的な内科的病態
アスレティックトレーニング実習 レベル3

↑2年目のセメスターが始まるオリエンテーションの日の私とクラスメイト。
上肢のバキュームスプリントを練習中
写真引用:Bridgewater State University Athletic Training Program
2年目の授業
夏学期[前半]
アスレティックトレーニングの運営
整形外科的治療
夏学期[後半]
なし。完全なる夏休み
自分でインターン先などを探して経験を積む学生も多いです。
秋学期
画像診断入門
運動医学の法令と政策
薬理学
アスレティックトレーニング実習 レベル4
春学期
心理学的介入と患者ケア
アスレティックトレーニング実習 レベル5

↑もはや定番のスパインボードの訓練
写真引用:Bridgewater State University Athletic Training Program
BSUの修士課程の卒業条件
さて大学院生というと、「修士論文が通ったら卒業」というイメージがありますね。
しかしアメリカのアスレティックトレーニング専攻の大学生には、必ずしも修士論文や研究が必須ではないところもあります。
BSUでは3つの条件のうち1つを満たせばプログラムを卒業し、アスレティックトレーニングの修士号が与えられます。

①アドバイザーの教授の指導のもと研究の授業を履修し、研究および口頭試問に合格する ②総合試験に合格する ③BOC(アスレティックトレーニングの国家試験)に合格する
アメリカの卒業式は5月。BOCは最初が2月、その次は4月にあるので卒業前に受験が可能です。
BOCの合格+カリキュラムの終了で、晴れてATCの資格が認定されます!
ここまでたどりついて、やっと新しいATCがこの世に誕生、というわけです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
それぞれの授業のもう少し詳しい内容についても、今後の記事で書いていけたらいいなと思っています。
個人的には、私の頃はなかった「画像診断学入門」の授業がめちゃくちゃ気になります・・・!
ここでいう画像とは、レントゲンやMRIといった画像検査のことですね。
どこまで詳しくやるのか/誰がこの授業を教えているのかは不明ですが(できれば指導教官は医師や放射線技師であってほしい)、日本の学部生時代(看護学専攻)のときでもさすがに画像のために1コマの授業ってなかったので、本当にアメリカのアスレティックトレーニング教育は「医療従事者を育てる」という点でどんどん進んでいるなと驚くばかりです。
学校によっては、医学部や大学病院を併設していてcadaver(解剖)の実習の授業があるプログラムもあります。
CAATEが定めたカリキュラムの一定軸はありますが、各学校がそれぞれ特色をもったプログラムを運営しています。
日本でもみんな国家試験に合格すれば同じ資格をもった看護師になりますが、どの学校で勉強したかによって学生時代の学びや生活スタイルが色々違ってたりするのと同じですね。
今回紹介したBSUの大学院のプログラムはあくまで一つの例ですが、私のように「医療」のバックグラウンドがある/勉強がもともと好きで、さらにスポーツに特化した知識や技術を学びたい!という人にとっては、スポーツ大国・アメリカでアスレティックトレーニングを学ぶことは非常にユニークで、面白い経験だと思います。

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ゆうこりん

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