こんにちは。ゆうこりん(@koji_i003)です。
今年は梅雨の雨が多く、比較的気温の低かった7月から比べると、いっそう暑さがこたえますね。
全国各地で熱中症で救急搬送される患者さんが、すでにあとをたちません。
7月には、ひらかたパークで着ぐるみショーの練習をしていた男性が、熱中症で亡くなるという痛ましい事故もおこりました。
スポーツによる熱中症事故は無知と無理によって健康な人に生じるものであり、適切な予防措置さえ講ずれば防げるものです。
ー『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(2015年度版)』より引用
このようにはっきりと明言されているのにも関わらず、どうして熱中症で倒れるのを事前に防ぐことができないのでしょうか?

これはあえて強調したいのですが、たとえば「自分も外で部活をやってたし、熱中症のことはわかってる」と思っている方も、過信してはいけません。

また、看護の国家試験の勉強をしていたときの知識も同様です。
看護師としての私の熱中症の知識は「学生時代とテレビで見るレベル」から大してアップデートされていませんが、アスレティックトレーナーとしては「専門家、世界のゴールドスタンダード」に常にアクセスできるものとなりました。
現在進行形で勉強・実践していない知識なんて「浅いし、古い」ことばかりです。
大人になってからやっと「昔学校で習ったことや、教科書に書いてあることを鵜呑みにしない」という姿勢が身についてきました。
そう、誰しも日々勉強が必要です!
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目次
熱中症の知識をためそう!クイズ

そこで、楽しく最新の知見を学ぶために【熱中症クイズ】を作りました!


突然の鳥顔の神の登場にびっくりしましたか?
気にせず本題に入りましょう!
熱中症の予防・対策として「間違ったこと」を言っているのは誰?
①高校アメフト部の監督、Aさん

天気予報によると、最高気温37.2℃、湿度66%だって?暑そうだなあ!
いつもより水、氷、スポーツドリンクも多めに用意して、アイスタオルやアイスタブも準備しておこう。
これで熱中症対策は完璧だな。
②中学サッカー部の顧問、Bさん

夏の練習では、30分に1回給水タイムを設けることにしよう。
③女子バスケ部に所属する高校生、Cさん

今日なんて朝体重測ったら55kgだったのに、部活から帰ってきてシャワー浴びて測ったらなんと、53.8kgだったよ!
汗かいて運動しただけでー1.2kg!スゴくない??
もちろん部活中は先生にも言われてるししっかり水分補給してるけど、夏って部活してるだけで超ヤセちゃうの!
④保健室の先生、Dさん

慌てて救急車を呼んで、男性の教諭を集めて倒れた生徒をクーラーのきいた涼しい保健室に移動させ、救急隊の到着を待ちました。
⑤高校テニス部の顧問、Eさん

もう元気だけど、一応週末の試合は引率せずに観客席からしっかり応援するね。
みんながんばれ〜!
⑥毎日ワイドショーを見ている主婦、Fさん

どれだけ対策しても、毎年熱中症で死亡事故が起こってしまうのも仕方がないくらい、日本って暑いのね。
自然災害に人間は勝てないのね・・・。
さて、この6人のうち間違ったことを言っている人が誰か、あなたはわかりましたか?
熱中症予防と対策、何に気をつければいいの?



①高校アメフト部の監督Aさんの場合

天気予報によると、最高気温37.0℃、湿度66%だって?暑そうだなあ!
いつもより水、氷、スポーツドリンクも多めに用意して、アイスタオルやアイスタブも準備しておこう。
これで熱中症対策は完璧だな。

炎天下の日曜日にアメフトの練習試合があるなんて、超過酷ですね・・・。
でもAさんは熱中症のリスクについてはさすがに把握していて、色々と準備をされているようです。

色々と対策を練っているのは素晴らしいが・・・「熱中症対策はこれで完璧」かと言われると、残念ながら答えはNOだな。
テスト期間などでオフをはさみ、久しぶりに炎天下で激しい運動を行うと、身体が暑さに慣れておらず熱中症のリスクは高まります。
また、本格的な夏のトレーニングや競技会シーズンが始まる前に、暑さに身体を徐々に慣らすための期間をもうけることを暑熱順化(しょねつじゅんか)といいます。
順化期間のはじめは運動量を軽めに設定し、段階的に負荷を上げていきます。
身体が暑さに慣れるのに、およそ7〜14日かかるといわれています。

どうすればいいんでしょうか。

当初の予定より暑さが厳しかったときや、うまく調整期間が設けられなかったときなど、いくら対策しても安全に競技が行えないという判断にならざるを得ない場合も十分にある。
そういうときは、予定を変更・中止する勇気を持って欲しい。
日本人は特に苦手なヤツかもしれない。
しかし、この一回のチャンスを逃すことと、選手のコンディションを著しく悪化させたり、ましてや死亡者が出てしまうのでは、どちらが取り返しのつかないことかはわかるはずだ。
殺人的な暑さの中、十分に暑さに慣れていない身体で全力プレーをするのは、大雨で氾濫している川の近くへ、様子を見に行くようなものかもしれません。
▲これ、絶対行ったらあかんやつ!
②中学サッカー部の顧問、Bさんの場合

夏の練習では、30分に1回給水タイムを設けることにしよう。


体の大きさや体調、運動量など、個人によって必要な水分量は違う。
本来であれば、運動中は自由に水分を補給できる環境を作らなければいけない。
したがって、これも間違いだね。
運動中はスポーツドリンクなど水分・塩分を補給できる飲み物を用意し、個人が「喉の渇き」に応じて自由に摂取できるようにしなければなりません。
NATA(全米アスレティックトレーナーズ協会)が発表しているポジション・ステイトメントにも、次のように書かれています。
Players should have free access to readily available fluids at all times, not just during designated breaks.
選手は決められた休憩の時間だけでなく、いつでも、すぐに、自由に飲み物が飲めるようにされるべきでる。(訳:私)
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③女子バスケ部に所属する高校生、Cさんの場合

今日なんて朝体重測ったら55kgだったのに、部活から帰ってきてシャワー浴びて測ったらなんと、53.8kgだったよ!
汗かいて運動しただけでー1.2kg!スゴくない??
もちろん部活中は先生にも言われてるししっかり水分補給してるけど、夏って部活してるだけで超ヤセちゃうの!


これは過度の脱水になっている可能性が高く、非常に危険だ。
体重が減った〜なんて喜んでる場合じゃないぞ。
本人は「しっかり水分補給してる」なんて言ってるが、大きな間違いだ!
さきほどの②Bさんの話にも関連しますが、運動中に脱水にならないために必要な水分の補給量として、体重減少がもとの体重の2%以内におさまることを目安とします。
私がアメリカでアメフト部で実習していたときも、選手は毎日練習の前後に体重を測ってシートに記入していました。
こうすることで自分の発汗量の予測ができ、どのくらい水分補給をすればよいかの目安になります。


これを機に、みんなも色々なリソースをもう一度調べなおしてくれ。
④保健室の先生、Dさんの場合

慌てて救急車を呼んで、男性の教諭を集めて倒れた生徒をクーラーのきいた涼しい保健室に移動させ、救急隊の到着を待ちました。


ただ、救急隊の到着を指をくわえて待ってるだけじゃダメだ!!
まずは、兎にも角にも身体を冷やして深部体温を下げることを何よりも優先させなければいけない。
Dさんも、熱中症で意識障害が出た患者への対応としては、誤りだ。
熱中症で倒れた患者さんは、倒れてから30分以内に深部体温(直腸温で計測)を38.9℃まで下げなければいけません。
長時間深部体温が高温のまま放置すると、脳に障害が出たり、最悪の場合死に至るケースもあります。
“Cool First, Transport Second”が鉄則である、と覚えておきましょう。
また、身体の冷却の仕方に関して非常にわかりやすくまとまった、こちらの記事もぜひ参照してください。
⑤高校テニス部の顧問、Eさんの場合

もう元気だけど、一応週末の試合は引率せずに観客席からしっかり応援するね。
みんながんばれ〜!


退院後に無理せず試合の引率を辞退したのはいいが、会場に応援に行くのも、まだやめておいたほうがいい。
体調が悪い人は熱中症になるリスクが高く、さらにこんな悲しいこと(下の画像参照)にもなりかねない。
どうか無理しないでくれ。
▼ニュース記事などでなく個人のツイートのスクショですが、十分に起こりうる事故だと思います。亡くなられた先生のご冥福を、心よりお祈りします。

- 一度熱中症になったことがある人
- 最近まで風邪をひいていた人
- 睡眠不足の人
- 下痢をしていたり、体調が悪い人
また、
- 発汗機能が未発達な子ども
- 高齢者
- 肥満の人
- 暑さに慣れていない人
- 体力の低い人
これらの人は熱中症になるリスクがさらに高いので、特に気をつけてください。

⑥毎日ワイドショーを見ている主婦、Fさんの場合

どれだけ対策しても、毎年熱中症で死亡事故が起こってしまうのも仕方がないくらい、日本って暑いのね。
自然災害に人間は勝てないのね・・・。


しかし、これまで説明してきたように、適切な対応をとれば熱中症で死亡することはない。
熱中症による死亡は、100%防ぐことが可能なんだ。
暑いから死んでも仕方ない、は間違い。
世界中の研究者たちによって、熱中症になっても絶対に患者を死なせない方法がすでに確立されているんだ。
「患者が熱中症で死亡するのは、適切な対応を取れなかったから」。こう断言できる世の中になったんだ。
そうなんです。
予防率100%が研究によって証明されているって、すごいことです。
“熱中症事故ゼロ神”は幻ではなく、研究者の方々による長年の努力によって、私たちが実際に実現できる科学的な知見なのです。
▲アップのゼロ神
まとめ


というわけで、問題の①〜⑥は「すべて間違い」というのが答えでした。
え、やらしい??
でも、興味を持って最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
最後に、参考資料を載せておきます。
参考資料
✔NATAポジションステイトメント:Exertional Heat Illness
✔日本スポーツ協会:スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブックダウンロードページ
✔KSI(Korey Stringer Institute)公式サイト
✔JATO(ジャパン・アスレティックトレーナーズ機構)のブログ記事
☟こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。
勉強になった、わかりやすかった、と思ってくださった方は、ぜひ身近な人にもシェアしてください。
※この記事は、2018年に投稿したものを一部加筆・修正しました。
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