ATCのお仕事について聞いてみた。仙台大学常勤アスレティックトレーナー内野洋材さん

こんにちは。ゆうこりんです。

「アメリカで学んだアスレティックトレーナーであるATCの人たちは、どういうところで働いているの?」

こんな質問もよく聞かれます。

そこで、この記事では現在日本で活躍されているATCの方の一人に、仕事についてのお話をうかがってきました!

仙台大学で働くフルタイムのATC・内野洋材さん

内野さんは、私がアスレティックトレーニングを学んだブリッジウォーター州立大学の先輩にあたります。

私が入学した時には内野さんはもうご卒業されていましたが、私の在学中も近くでお仕事をされていたので、渡米最初の年などは本当に内野さんに色々と助けていただいたという、個人的には恩人でもあります。

内野さんのプロフィール

名前:内野洋材(うちの・ひろき)

経歴:兵庫県赤穂市出身。

早稲田大学スポーツ科学部卒業後、ハワイ大学のアスレティックトレーニングプログラムに入学。

その後ブリッジウォーター州立大学の修士課程に編入し、2013年卒業、ATC取得。NFLデトロイト・ライオンズでアスレティックトレーナーのイヤーインターンとして1年間勤務。

2014年〜日本に帰国後、日立サンロッカーズのストレングスコーチ兼通訳として活躍。

2015年〜現職。

では、早速お話を聞いてみましょう!!

▲豆を挽いてコーヒーを淹れてくれる内野さん。あたたかいおもてなしにとても癒されました。

内野さんの仙台大での仕事

ゆうこりん(以下、ゆ):こんにちは。今日はお仕事について色々聞かせてください!まず、どんな仕事をされているんですか?

内野さん(以下、内):大学の授業がある期間は、月曜から金曜までこのアスレティックトレーニングルーム(以下、ATルーム)を開けているので、練習前のテーピング巻いたりリハビリしたり、ここで選手の対応をしています。それ以外にも、僕は男子バスケットボール部の担当なので時間外で練習を見に行ったり、試合にも帯同しています。

f:id:yuko03atns:20180310225522j:plain▲バスケ部の練習が行われている体育館。3面もコートがある

ゆ:勤務のスケジュールはどんな感じですか?

内:平日は午前10:30〜12:30、午後13:30〜18:30がATルームを開けている時間です。午後に一気に来られても対応しきれないので、選手にはなるべく授業の合間などを使ってばらけた時間に来てもらうようにしています。

ゆ:平日はATルームで勤務をして、さらに土日もバスケ部の練習とか試合とか帯同して、忙しいですね!

内:そうですね。でもATは全部で3人いるので、バスケ部の活動は基本的に僕が担当だけど、ATルームでの勤務はシフトを組んでみんな順番に休みを取れるようにしています。

▲何気にライオンズ時代のダウンジャケット

アスレティックトレーニングルームについて

ここで、そもそも「大学内にあるATルームってなんぞや!?」と思う方もおられるかもしれません。

私は日本で総合大学に通っていましたが、別にスポーツの強豪校とかでもなかったし体育学部があるわけでもなかったので、アメリカの高校や大学でそういった学生スポーツをサポートするシステムがあると知るまでは、全く馴染みのない概念でした。

イメージとしては、部活をしている学生が、怪我をしたりどこかに痛みなどの不調を抱えているときに訪れるアスリート専門の保健室のような感じです。

そこで対応してくれるスポーツ医学の専門家が、内野さんのようなアスレティックトレーナーというわけです。

また、一般的には怪我の処置だけでなく、怪我を予防するためのテーピングや、怪我から段階的に競技のトップパフォーマンスに復帰するまでのアスレティックリハビリテーションなども行います。

そのため、ATルーム内はリハビリ・コンディショニング用にジムのような設備があります。

f:id:yuko03atns:20180310224822j:plain

特に、仙台大学はアメリカ式のATルームやトレーニング設備を取り入れていることで有名です。

仕事のやりがい・楽しさ

ゆ:仕事、楽しいですか?

内:楽しいですよ!やっぱり、日本でこういう風に”がっつりアスレティックトレーナー(AT)”として働けるって、なかなかないから。僕たちは、”新助手”という形の雇用で、ATとしての仕事をするために雇われている。たまにトレーナー科の授業でテーピングを教えたりもするけど、教員として授業を教えながら片手間にトレーナー活動をする、みたいな形じゃなくて、朝から晩までATとして現場の仕事ができるというのは、とてもありがたいですね。

ゆ:そうですよね。AT専業でフルタイムで働ける大学のセッティングって、日本ではなかなかないですよね。どういうことにやりがいを感じていますか?

内:もちろん選手を怪我から復帰させたり、見ている選手の活躍は嬉しいし、やりがいを感じるけど、そういう普通のこと以外にってことでしょ(笑)?

▲写真撮りすぎて笑っちゃう内野さん。普段はひろきさんと呼んでいます。いつも優しくて、誠実で、信頼できる先輩です

内:仙台大には学科とは別に「アスレティックトレーニング部」があって、各部活についてトレーナー活動をする部活の学生がいるんですが、彼らに自分たちの学びを教えることにもやりがいを感じます。セミナーなどを受けて学ぶことと、人に教えることは全然違う。学生に教えることで自分自身の理解も深まります。

AT学生にどんなことを教えていますか?

ゆ:学生さんたちにはどんなことを教えているんですか?

内:現在は、初級・中級に分けて指導をしています。初級ではテーピングや基本的な解剖生理、ストレッチなど。中級ではもう一歩踏み込んだ解剖の知識、触診の方法、さらにそれらに関連する怪我などについて取り扱います。上級はまだ計画の段階ですが、さらに応用的なことをやろうと他のATたちと考えています。一応、このレベル分けは「学内の認定資格」を取るためのものになっています。

ゆ:そうやって順序立てて教えてもらえると、とてもいいですね!他にはありますか?

内:あとは、ポジションステイトメントの内容に沿って脳振盪や熱中症の内容も勉強します。また、自分たちが参加したセミナーでの最新の情報や、少し難しいかもしれませんがPRIPostural Restration Institute)などのことも触れたりします。今すぐ全部理解することが難しくても、「こういうものもある」ということを知れば、興味を持って今後もっと勉強したいと言ってくれる子もいますしね。自分が現在進行形で学んでいることも、少しでもフィードバックできれば、と思っています。

▼この日も、鈴木ATCを囲んでAT部の学生さんたちの報告会が行われていました。f:id:yuko03atns:20180310225833j:plain

▼ATルームに置かれていたホワイトボード。勉強計画がびっしり!

その場にいた学生さんにもお話をうかがってみました!

ゆ:こんにちは〜。今何年生ですか?

AT学生さん(以下、学):3年生です。

ゆ:ズバリ、AT部の活動、どうでしょうか(この人誰?って思われてるやろな〜)!?

学:やっぱり授業は日体協の資格合格のためのものなので、教本に沿った内容を勉強しますが、ここでは実際に現場で働いている方に実践的なことを教えてもらえます。私も女子バレー部でトレーナー活動をしているのですが、現場で使えることを学べるのでとても勉強になります。論文の内容とか、英語で発表された最新のこととかを日本語で説明して広めてくださったり。

ゆ:学生のときからそういった情報をプロから直接学べるって、すごい機会ですよね!卒業後の進路はどうされるんですか?

学:私は、トレーナーを仕事にするかはまだわからないんですけど・・・。教員になりたい子とかもいて、その子はATの知識を教師として学校で働く時に活かしたいと言っています。私も、どこで働くにしてもここで学んだ知識は活かせると思います。

ゆ:(突然話しかけて色々聞いたのに、すごく丁寧に答えてくれました!)ありがとうございました!これからも頑張ってくださいね!

アメリカで学んだATCだからこその強み

ゆ:内野さんの、アメリカでの経験などが活かせてる「強み」とかはありますか?

内:う〜ん。強みねぇ・・・(少し考えて)学生を見ていると、英語がひとつの壁にもなっているようなので、海外から英語で発信される情報をいち早くキャッチできることもATCならではの強みといえば、強みでしょうか。

ゆ:ポジションステイトメントやスポーツ医療の新しい指針も、英語でどんどんアップデートされていきますもんね。

内:あとは、プロの世界(※内野さんはアメリカでアメリカンフットボールの世界最高峰のリーグ、NFLのチームで1年間アスレティックトレーナーとして勤務されていました。また日本でも日立サンロッカーズ(現・Bリーグ)で1シーズン働いていました)に少しでも身を置いていたという話をすることで、プロで働くこともそんなに遠い世界じゃないんだ、と身近に感じてもらえるきっかけにもなるかと思います。

▲内野さんがNFLデトロイト・ライオンズでイヤーインターンをしていた頃の写真をいただきました。
アメリカの4大プロスポーツの1つであるNFL。
満員のスタジアムの大歓声の中で働く経験は、誰にでも簡単にできることではありません。

ゆ:確かに、身近にそういう経験を語ってくれる大人がいると視野が広がりますね。

内:そうですね。これまでも海外に目を向ける学生もいて、卒業後にドイツに留学してフィジオセラピストの勉強をしている子もいますし、ATCになるためにアメリカに行った子も何人かいます。もちろんトレーナー関係の仕事に就かなくてもいいんです。ただ、ここで学生生活を送る間に何か興味があることを見つけて、やりたいことに向かって進んでいってくれると嬉しいですね。

▲ご自身がたくさん挑戦をされてきたからこそ、その言葉には強さと謙虚さが感じられます。

仕事で大切にしていること

ゆ:では、仕事をしている上で「大切にしていること」は何かありますか?

内:それはいい質問だね(笑)。
そうですね、当たり前のことだけど「向上心を持ち続けること」でしょうか。それは勉強に関してもだし、人との接し方などもです。現状に満足したら、そこで思考停止してしまう。アスレティックトレーナーは特に、常に勉強していなければならない仕事です。まぁ常にずっと成長し続けなくてもなんとかなる、別に食っていける社会人だって世の中にはたくさんいるとは思いますが、ここを卒業した子にはそうはなって欲しくない、とは思っています。

お忙しいところ、たくさんお話を聞かせていただきました。ありがとうございました!

編集後記

内野さんは、アメリカにいた時から変わらず、自分が苦しい状況にあるときでも、いつも穏やかで優しい「頼れるお兄さん」でした。

記事中でお話を聞かせていただいた学生さんも、内野さんってどんな人?という質問に「なんでも話せて、本当に何でも相談できる人です!」と即答してくれました。

今回は現在のお仕事のことを中心にお話をうかがったのですが、特にアスレティックトレーニングを学んでいる学生さんへの指導や関わりをとても大事にされていることが伝わってきました。

インタビューでもお話しいただいたように「自分が常に向上心を持って勉強し、知識をアップデートしてスキルを高めるのは当たり前」という前提で、自分自身が大学勤務のATとしてベストなパフォーマンスをするというのは当然とし、さらに若い世代に伝えられることをATルームのみんなで工夫しながら活動されている姿が印象的でした。

内野さんのように、アメリカでたくさんのチャレンジをし、たくさんの壁を乗り越えて経験を積み重ねてきたアスレティックトレーナーといつでも話したり相談したりできる環境は、AT学生さんはもちろん、ATルームを利用する選手たちにとってもとても貴重だと思います。

親でもなく、先生でもない、身近な人生の先輩たち。

大学で働くアスレティックトレーナーは、学生たちにとってスポーツ医学の頼れるプロであり、何でも相談できる頼れるお兄さんお姉さんのような存在なのかもしれません。

内野さん、お忙しいところ施設の案内や、たくさん貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました!

f:id:yuko03atns:20180310223304j:plain▲ひろきさん、また会えるの楽しみにしてます!

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ゆうこりん

ゆうこりん

BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)でもある看護師です。 現在は整形外科で病棟看護師として働きながら、スポーツ医学やアスレティックトレーニングをテーマに空き時間に気軽に読めるメディアを運営。休日にスポーツイベントや大会の救護などの活動も行なっています。 内科・耳鼻科・眼科混合病棟→米大学院→スポーツ整形外科。

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ゆうこりん

BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)でもある看護師です。 現在は整形外科で病棟看護師として働きながら、スポーツ医学やアスレティックトレーニングをテーマに空き時間に気軽に読めるメディアを運営。休日にスポーツイベントや大会の救護などの活動も行なっています。 内科・耳鼻科・眼科混合病棟→米大学院→スポーツ整形外科。