病院で働く「トレーナー」ってどんな仕事をしてる?直撃してみた!

こんにちは。スポーツ看護師ゆうこりん(@koji_i003)です。

ゆうこりん
日本で、運動指導者としての「トレーナー」の働き方って、スポーツチームの指導以外にどんなものがあるんでしょうか。

私は新卒のときから、【看護師】という、法律で整備され職業としてすでに確立された業界で働いていました。

しかし、多忙で閉塞的な入院病棟での仕事に疲れ、医療者として大好きなスポーツに貢献したいという思いで看護師4年目の時に渡米し、アメリカの大学院を卒業してBOC公認アスレティックトレーナー(ATC)になりました。

いわゆる「トレーナー業界」の人たちと関わるようになってからは、私自身も普通の一般的な看護師だった頃は知らなかった、日本のアスレティックトレーナー(AT)やその他トレーナー関連の有資格者の仕事の実情や問題点、スキルを活かした多様な働き方について色々な方とお話しし、アイデアを広げ、よく考えるようになりました。

今回はリハビリ病院のトレーナー部門立ち上げに従事し、現在は理学療法士の専門学校に通う「腹筋のお兄さん」ことよこさんにお仕事の話をうかがう機会が持てました。

病院で働く「トレーナー」ってどんな仕事をするの?

理学療法士とは何が違うの?

こんな疑問を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。

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トレーニング指導はなんと病院からのサービス!

ゆうこりん
よこさん、まずはこれまでの経歴を簡単に聞かせてください!
よこさん
僕は専門学校でJATI-ATIの資格(JATI認定トレーニング指導者)を取得後、夜間の理学療法士の専門学校に進学し、昼間はリハビリテーション病院に新しくできた「トレーナー部門」に就職し、立ち上げを行いました。そこで2年8ヶ月働いて、実習が始まるので先日退職したところです。
ゆうこりん
新卒で就職して、いきなり創設期の職場と新しい学業の両立、素晴らしいですね。トレーナーとして、病院ではどんな仕事をしていたんですか?
よこさん
様々な疾患の回復期にある患者さんに、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)の介入のあと、レジスタンストレーニングや筋力トレーニング、ストレッチの指導などをしていました。
ゆうこりん
リハビリ単位で決まった時間の理学療法の他に、トレーニング指導をする役割ということですね。でもそれって、医療保険が効かないってことですか?
よこさん
そうです。僕たちトレーナーの指導はリハビリ単位に含まれません。しかし通常は9単位のところをプラス2単位40分の運動指導をするのですが、このトレーナーによる指導の時間は患者さんからお金をいただかず、病院からのサービスという位置付けです。
ゆうこりん
患者さんの自己負担じゃなくて、病院からのサービスなんですね!それはすごい。画期的な病院ですね・・・!

よこさんが勤務されていた病院は都心にあるリハビリテーション病院ですが、他の病院との差別化を図るためのサービスとしてこのようなシステムを取り入れたというのも理由の一つだと考えられます。

たとえば脳卒中リハの時間はとても貴重で、単位で決められたPT・OTさんとのリハビリの時間はADL向上のための機能訓練に費やされます。

それ以外にも安全に日常生活を送るためには、病気や手術のせいで大きく低下した筋力の回復や維持(=動作の取得だけじゃなくて、筋力アップ!)が不可欠ですが、リハの時間内でそこまで指導するのは難しいことが多いです。

かといって、「お金を払ったらトレーニング指導もするよ!」と言われても、なかなかその必要性を自覚し、自ら投資する決断に至る患者さんが何人いるかは疑問です。高齢者の方ならなおさら、もう歩いて家で生活できたら十分。とそれ以上の可能性を考えたりすることも少ないのが一般的です。

私はよこさんが勤務されていた病院の経営者の方の本当の意図やこれまでの経緯は存じ上げませんが、この超大事だけどニーズが潜在化している(と思われる)部分を、病院のサービスとして形にしていることに感銘を受けました。

本当に患者さんのためになることを考えているんだな、と。

もしかしたら入院費や室料がめっちゃ高いとかあるのかもしれませんが笑、資金をこのような形で使うのは大賛成です。

医療情報を共有した上での安全な指導

▲おしゃれなカフェのテラス席でよこさんのお話をうかがいました

ゆうこりん
トレーニングの内容はどのように決めるんですか?
よこさん
トレーニングの内容はトレーナーが勝手に決めるのではなく、担当PTから指示を受け、しっかりと話し合って決めます。トレーナーの介入が始まる前にPTと患者さんのリハの様子を見学し、どのようなトレーニングをしてほしいのか、負荷をどこまでにするかを確認します。週何回やるかも患者さん本人と担当PTと話し合って決めます。
ゆうこりん
患者さんの状態をきちんと把握した上で、安全にトレーニングを指導してもらえるというわけですね。逆にPTさんにもフィードバックをされるんでしょうか。
よこさん
そうですね。扱った重量の変化とか、動作の変化などを報告します。

▲チーム医療の一角としてのトレーニング指導。患者さんも安心です

患者さんへのトレーニング指導の注意点

▲バキバキのよこさん。運動指導者として説得力のある身体です。

ゆうこりん
民間のジムで健康な方にトレーニング指導をするのと、脳卒中後の回復期にある方や整形外科の術後の患者さんにトレーニング指導をするのでは、違う部分がたくさんあると思います。
よこさん
そうですね。たとえば脳卒中後の患者さんには上半身へ負荷をかけないとか、バルサルバはしないとか、血圧の変動に気をつけたりなど、トレーニングを指導する際に様々な注意が必要です。人工関節置換術後の患者さんには禁忌動作を避けるなどの配慮をします。
ゆうこりん
脳卒中の患者さんって、どんなトレーニングをするんですか?自重の筋トレとかですか?
よこさん
自重の筋トレも行いますが、体幹のエクササイズや、レッグプレスなどマシンを使ったトレーニングも行いますよ。主に下肢中心ですね。
ゆうこりん
脳卒中の患者さんも、レッグプレスとかできるんですね・・・!一人だと絶対やってみようって思えない気がしますが、プロの指導の元だと安心ですね。

このように医療従事者の管理の元で、患者さん一人一人の状態に応じてトレーニング指導が受けられるというのは、街のフィットネスクラブではなかなか実現が難しいところです。

  • 患者さんの状態の把握と医療情報の共有
  • 何かあった場合の危機管理
  • トレーナー側の疾患や禁忌への理解と継続学習
  • 健康状態に不安があるクライアント側からの指導者への信頼

など、様々な壁があるのではないでしょうか。

入院し手術を受けた病院の管理下で、リハビリのあとさらにトレーニングが安全に受けられるという環境は、人口の30%以上が65歳であるという超高齢化社会がすすむ日本※では、今後もニーズが高まっていくと考えられます(※厚生労働省のデータより)。

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トレーナーの介入で退院後のセルフエクササイズ継続率が向上!

▲医療系の本や解剖アプリ談義で盛り上がりました

ゆうこりん
このような取り組みをされている病院はまだまだ多くないと思いますし、非常に社会的意義の大きいお仕事ですね。新設のトレーナー部門の立ち上げから3年弱お仕事をされたということですが、その効果はいかがでしたか。
よこさん
退院後の患者さんの状況について病院で追跡調査を行なっているんですが、これまでは入院中はPT・OTの介入もあってしっかりリハビリができていても、退院して自宅に戻られてからは指導したセルフエクササイズをきちんと継続できている患者さんが少ないという課題がありました。その点、トレーナー介入を行った患者さんでは退院後のセルフエクササイズの継続率が高い、というデータが出ています。
ゆうこりん
おお〜それはすごいですね。なぜセルフエクササイズの継続率が高くなったんでしょうか?
よこさん
やはり、入院中からマシンなどを使って”筋トレ”をすることで、トレーニングに対する自信が持てることや、重さを挙げられるようになったり身体の機能がアップしたことで成果を実感し、もっとトレーニングをしたいと思えるモチベーションにもつながっているのだと思います。患者さんから退院後にジムに通いたいという声もあったりして、嬉しかったですね。

▲イメージ画像ですが、サンダルよりかかとのある靴がいいですよ

「トレーナーの就職先」が増やせた

よこさん
就職したときに部門を立ち上げたので僕が第1期になるのですが、病院側から必要性を見出してもらえたことでその後も新しく後輩が入ってきて、新しくトレーナーの就職先が増やせたこともよかったと思っています。
ゆうこりん
よこさんたちの取り組みがうまくいったことで、道を切り開くことにつながったんですね。素晴らしいです。
よこさん
僕も最初はサッカーのトレーナーになりたくてトレーナーの専門学校に行ったんですが、「スポーツトレーナーはスポーツ選手しか見ない」というイメージが学生には多く、視野も狭くなりがちです。トレーナーもこういうところで働けるんだよ、という道を後輩にも示せたら嬉しいです。

▲退職の日に、今後の決意を込めた1枚。かっこいい

現状では、退院後にトレーニングを継続する受け皿がない

よこさん
ただ、僕が働いていて感じたのは、たとえ患者さんがトレーニングのメリットを実感して、退院後もトレーニングを続けたい!と思ったとしても、社会には受け皿がないんです。普通のフィットネスクラブだと、メディカルチェックではじかれて入会できなかったりする。そういうハイリスクの方のトレーニングを見れるスタッフがいないんです。
ゆうこりん
そうですよね。最近まで入院してたという杖歩行の方が、ジムに入会したいです〜ってふらっと来られても、なんの医療情報もなしにトレーニング指導する責任を持つのはかなり難しいですよね。
よこさん
そうなんです。たとえば脳卒中の患者さんで片麻痺や高次機能障害などの後遺症がある場合、退院後のトレーニングを行う環境を見つけることが本当に困難です。だから将来的には、障害者専用のトレーニングジムを作りたいと思っています。病院と提携し、カルテを共有してPT、OT、ATなどが協力し、退院後のトレーニングを引き継ぐ形にしたいと考えています。
ゆうこりん
それ、すごくいいですね。退院後、専門家のアドバイスなしにトレーニングをするのは、体調が悪化しないか患者さんも不安ですもんね。
よこさん
あとはやっぱり「予防医学」の重要性に気づきました。トレーニングをしていて、「体によくないとわかっていたけど、もっとこうすればよかった。」とそれまでの食生活や生活習慣を後悔される患者さんも多かったです。

日本の医療保険制度は国民全員が平等に医療が受けられる制度になっていて素晴らしいけど、だから病院に行かなくて済むように自分の健康を大事にしようと考える人が少ない。

病気になってからじゃ遅いんです!

自分で知識をつけて、病気にならないようにすれば受診率も減り、国の医療費の削減にも繋がります。

リハビリ病院のトレーナーとしてトレーニング指導をする中で、現代の日本が抱える多くの課題に気づいたよこさんは、ここでお話いただいたように【予防医学】の重要性に気づき、今後の活動の指針として様々な活動や発信をされています。

よこさんが持っているのは、JATI-ATIというJATI認定のトレーニング指導者の資格です。

しかし彼の経験した仕事のお話を聞いていると、”どんな資格を持っているか”はここではあまり重要でないように感じます。

要は「きちんとアップデートされた医学的知識を持ち、医療従事者とコミュニケーションを取って、健康上の問題がある人に運動指導ができる」というスキルを活かした仕事だな、という印象です。

どこの医療機関でもすぐにこのようなトレーナーとリハビリが連携する環境を作れるわけではないと思いますが、個人的には「医学的知識」と「トレーニング指導」は非常に相性がいい組み合わせだと強く実感しています。

よこさんについてもっと知りたい方はコチラ↓

twitterで栄養やトレーニングについての情報発信もされています↓

よこさんの今後のご活躍をこれからも楽しみにしています!

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ゆうこりん

ゆうこりん

BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)でもある看護師です。 現在は整形外科で病棟看護師として働きながら、スポーツ医学やアスレティックトレーニングをテーマに空き時間に気軽に読めるメディアを運営。休日にスポーツイベントや大会の救護などの活動も行なっています。 内科・耳鼻科・眼科混合病棟→米大学院→スポーツ整形外科。

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ゆうこりん

BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)でもある看護師です。 現在は整形外科で病棟看護師として働きながら、スポーツ医学やアスレティックトレーニングをテーマに空き時間に気軽に読めるメディアを運営。休日にスポーツイベントや大会の救護などの活動も行なっています。 内科・耳鼻科・眼科混合病棟→米大学院→スポーツ整形外科。