こんにちは。ゆうこりん(@koji_i003)です。
今年は梅雨入り前の5月から、もう一気に夏のような暑い日が続きました。
身体がまだ暑さに慣れないうちに急に気温が高くなると、熱中症になるリスクも高くなります。

さて先日、公益財団法人日本スポーツ協会が発行されている『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』の改訂版がリリースされました。
この冊子のどこが好きかというと・・・
- 持ち運びやすいA5サイズ
- 詳しいのに、読みやすい
- 図表やイラストが豊富で知識がなくてもわかりやすい
- サイトから無料ダウンロードできる
- 情報提供のためにシェアしやすい
こんな感じ。一般の方にも、とてもおすすめです。
ところで新しいガイドブックの裏表紙を見ると、2019年5月20日に今回の第5版が発行されており、その前の第4版は2013年4月16日に改定されているようです。
つまり、6年ぶりの改定というわけですね。
この6年で、日本の熱中症に対する認識と、対策プロトコルはどのくらい変わったのでしょうか?
このガイドブックが好きすぎるあまりとても気になったので、第4版から第5版で何が改定されたのか見比べてみました。
目次
公式の改定ポイントは4つ
ちなみに、実は一生懸命探さなくても公式サイトが改定ポイントを列挙してくれています。
2019年5月の改訂のポイントは、①熱中症予防運動指針をよりわかりやすく記載、②最新データに更新、③実践に近い身近な情報を追加、④身体冷却や暑熱順化のついて追記、の4点です。(日本スポーツ協会公式サイトより引用)
②はいいですね。
他は気になりますね??
というわけで、すでに持っている第4版と、最新版(をプリントアウト!!)と付箋を用意して、舐めるようにじっくり読んでみました。
熱射病になったときの体の冷やし方がより詳しくなった

④身体冷却や暑熱順化についての追記にあたるところだと思われますが、「熱射病が疑われる場合の身体冷却法」のページの記載がとても詳しくなっています(p9)。
具体的には、
- 氷水に全身を浸して冷却する方法だけでなく、(氷水のバスタブが用意できない状況を想定して)「水道につないだホースで全身に水をかけ続ける冷却方法が次に推奨される」という、現実的に実施可能な2番目の選択肢が追記されている。
- 現場での体温測定としては「直腸温」が唯一信頼できることが追加されている。
これめちゃくちゃ重要だけど、第4版には書かれていなかったんですね。
一般の方にも、一般的にわきの下ではかる体温って実は熱中症の判断には適していないということを広めたいですね。
- 直腸温の測定ができない場合でも、上記の方法で身体冷却を速やかに開始する必要があること。熱射病の救命は、いかに速く(約30分以内に)体温を40℃以下に下げることができるかにかかっているという記載。
今までは、「こういう方法で冷却して、救急隊の到着を待ってください」とふんわり書かれていましたが、最新版では緊急性と必要性を訴えかける緊張感が伝わるような文章に変更されています。
身体冷却について見開きのページができた

改定前のガイドブックでは、「プレクーリング」についての1ページのコラムがありましたが、改定版ではそれの代わり(?)に「身体冷却」という見開き2ページのセクションが新しく作られました。
ここでは、身体を内側と外側から冷却する方法について詳しく解説されています(p24-25)。
身体を内側から冷やす方法とは、冷たい飲料などを摂取することです。
近年話題になっている、氷と飲料水が混合したシャーベット状の飲料水「アイススラリー」に関する記述も新たに追加されていました。
身体を外側から冷やす方法として、「アイスバス」「アイスパック」「クーリングベスト」「送風」「頭部・頸部冷却」「手掌冷却」が挙げられ、それぞれ運動中や休憩時、運動後などどのタイミングで実施するのがより効果的であるかを表にして説明してくれています。
これを読む人がスポーツを行っている状況や環境に応じて、現実的に取り入れやすい身体の冷却方法を検討する際の参考になりますね。
暑熱順化のポイントが充実
本格的な夏に激しい運動をする前に身体を暑さに慣らすことを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。
第4版では、身体を暑さに慣らすために1〜2週間くらいの順化期間を設け、最初は運動量を少なく、徐々に負荷を高めましょう。環境や個人差に配慮して行いましょう。みたいな感じでややざっくりと書かれていましたが、最新版ではマニュアルばりに、もっと詳細で具体的な記載に変更されています(p38)。
▲『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(2019)』PDFより引用

だからたとえば、「めちゃくちゃ暑かった去年の夏を乗り越えたんだから、ちょっと気温の高い5月の練習なんていけるいける!」とかじゃないんですよね。
せっかく暑さに身体を慣らしても1週間くらいでまた戻っちゃうので、1年前の夏の記憶って、頭では覚えていても暑い中でどんな感じで汗をかいて、どんな風に運動をしていたかって、身体はすぐに思い出せないんですね。
暑熱順化は1日にしてならず。
症例の紹介で、より「自分ごと」に

また、運動時の熱中症の典型的症例が4つ紹介されています(p34-35)。
これは第4版にはなかった新規コーナーです。
記事の冒頭で紹介した公式の改正点で言えば、③実践に近い身近な情報を追加の部分でしょうか。
こんな感じのことが書かれています☟
【症例2】熱疲労
45歳男性。夏の炎天下、ゴルフを行った。ワンラウンドを終わる頃から、次第に酷暑が耐え難くなり、全身倦怠感と頭痛が強くなり吐き気を伴うようになった。(中略)
吐き気のため飲料もあまり飲むことができなかった。(中略)
帰宅中ますます気分は悪くなり嘔吐を繰り返すようになったため、途中で病院を受診。(中略)
発汗が続いており、皮膚はむしろ冷たいくらいであった。(以下、略)
(『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(2019)』PDFより引用)
症例掲載のいいところは、たとえば「熱中症の症状:倦怠感、頭痛、嘔気・嘔吐、めまい〜」みたいに単語の羅列で書かれるよりも、それが起こった人物の状況と、時間の流れによる症状の変化などが、ストーリーとしてイメージしやすいところだと思います。
そのほうが印象に残るので、もし目の前で暑い日に気分悪くて吐いてる人を見た時に「なんかこういう状況、どっかで見たことある!もしかしてこれやばいやつかも?」ってピーンときやすいのではないでしょうか。
参考文献にNATAのポジションステイトメントが追加!
巻末に記載されている参考文献も、9→12件に増えています。
その中には、NATA(=National Athletic Trainer’s Association/全米アスレティックトレーナーズ協会)がPublishしているポジションステイトメントも今回から加えられていました(p55)。
『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(2019)』PDFより引用
だからどーした!?って思う方ももしかしたらおられるかもしれませんが(笑)、日本スポーツ協会認定アスレティックトレーナーと、NATA公認(BOC)のアスレティックトレーナーは、勉強した国やカリキュラム、資格の発行元は違えど、「安全にスポーツを楽しめる環境をつくりたい」という思いは同じですよね。
なので、信頼のおける有用なリソースは世界各国からどんどんひっぱってきて、我々の大切な人たちが暮らす日本のスポーツ環境を、よりよくするために全力を尽くしているっていう一つの形がこのガイドブックなのかなと思うと、ますます「あ〜いい取り組み!このガイドブックを作成してくださっているみなさま、ありがとうございます!!」という気持ちになります。

みなさまもぜひ、無料なので日本スポーツ協会さんの公式サイトからダウンロードして、夏のアクティビティに備えてください!!
ではまた!
追記:2019年8月
なんと、日本スポーツ協会の公式サイトから「改訂ポイントについてのまとめ」が発表されていました(笑)
こちらもぜひ合わせて見てみてください!
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ゆうこりん

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