こんにちは。
看護師/アスレティックトレーナーのゆうこりん(@koji_i003)です。
近年のフィットネスブームの高まりからも実感できるように、
「健康で元気に生きるためにスポーツやトレーニングをしよう!」という認識は、老若男女問わず、一般的に広まってきつつあります。
では、身体障がいのある人は、どのようにスポーツやトレーニングを日常生活に取り入れることができるのでしょうか?

体のコンディションが特に一人ひとり異なる障がい者の方こそ、その人にあったオーダーメイドのトレーニングを指導してくれるパーソナルトレーニングと相性がいいのではないでしょうか。
今回は、障がい者の方を専門にした「訪問型」のパーソナルトレーニングを行なっているアスレティックトレーナーの方にお話をお聞きしました。
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目次
Universal Training Center代表・菅原さんのプロフィール

名前:菅原瑞貴(すがわら・みずき)
経歴:宮城県仙台市出身。
ネバダ州立大学ラスベガス校にてアスレティックトレーニングを学び、ATC取得。
米国プロサッカーチーム、スポルティングカンザスシティーにてイヤーインターンとして勤務。
2013年に帰国後、脊髄損傷者に対してトレーニング指導を行う。
2017年 Universal Training Center設立、代表就任。
資格:
BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)
JWIA初級車いすインストラクター
障がい者専門のパーソナルトレーニングって?
▲クライアントさんのトレーニング指導を行う、菅原さん(右)。
菅原さんとは、JATO(ジャパン・アスレティックトレーナーズ機構)でのプロジェクトメンバーとして一緒に活動させていただき、いつかゆっくりお話を聞かせていただきたいと思っていました。


「訪問型」のパーソナルトレーニングのお仕事とは?
▲パーソナルトレーナーのほうから自宅までトレーニング指導に来てくれる!


もちろん場所は必ずしも自宅である必要はなく、クライアントさんが普段使っているジムに一緒に行って、マシンを使ったトレーニング指導などを行うこともあります。
菅原さんは、前職で脊髄損傷者へトレーニング指導をされていた経験と、アスレティックトレーナーとして医療をバックグラウンドにしたヒトの体をみる知識とスキルを生かし、主に機能改善を目的として、一人ひとりの状態に合わせたパーソナルトレーニングを行なっています。
また菅原さんの方から指定の場所に出向いてもらえるため、クライアントさんは移動の負担を最小限にしつつ、集中してパーソナルトレーニングを受けることができます。
パラアスリート専門ではなく、一般の方にこそ利用してほしい

▲アスリートじゃなくても、体を動かしたいのはみんな同じ!
(画像はイメージです)


たとえば車椅子で生活している方といっても、活動レベルはさまざまです。
菅原さんいわく「パラ競技をされているようなアスリートは、普段から体を動かす習慣もあり、比較的健康な方が多い」とのこと。
むしろ、それまでに運動習慣がなく、車椅子生活になってもっと体を動かしたいけれど、どうしていいかわからない。
体を動かす環境がない。
そんな人にこそ、Universal Training Centerのサービスを届けたい、と菅原さんは言います。
価格に込めた思い
▲川沿いのカフェでお話をうかがいました


ドアを開けてから出るまでを2時間と考えて、前後10分は準備をしたり、フィードバックやコミュニケーションをとる時間というイメージです。
最小単位が100分なのは、トレーニングに入る前に筋の緊張を和らげたりすることに健常者より時間がかかることが多いことや、訪問型であるため、トレーナーの移動時間を考慮した設定だそうです。
単純計算で50分のパーソナルトレーニングが7,000円というのは、普通のフィットネスジムの相場とそう変わらないように感じます。

障がい者向けのサービスは、福祉関係で無償のものも多いのですが、それだとなかなか広まっていかないということがある。
あるいは、逆に高すぎるサービスもあります。
そうではなく「健常者と同じ感覚で利用してほしい」と考えています。
- 訪問型であり、クライアントに移動の時間と負担を取らせないこと。
- 障がい者に特化しており、一人で動かすと怪我のリスクなどもあるところの安全面を担保していること。
さらに、前提として脊髄損傷の方などのトレーニング指導ができる人は多くなく、その専門性を考慮すれば相当お得な値段設定だと思います。
付加価値の多さを考えると、健康な人へのパーソナルトレーニングと同じくらいの相場でいいのか?という疑問にも、「(アスリートではない)一般の障がい者の方に、体の動かし方を知ってもらいたい」という思いから、現在のような料金システムにされているということでした。
「受傷から何年も経って、医師からは“もうこれ以上動けるようにはならない”と言われていても、トレーニングを継続することで、できないと言われていたことができるようになることもある。だから諦めずに、できることをやろう、というメッセージを広めたいと思っています。」
このようにお話されていたのが、とても印象的でした。
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障がい者専門のパーソナルトレーニングを始めたきっかけ
▲リオ・パラリンピックにて
プロサッカーのトレーナーになりたくて渡米


資格を取りアスレティックトレーナー (ATC)になったあと、プロサッカーのチームでインターンとして働くことができました。
アメリカで、かねてからの夢だったプロのサッカークラブで働くチャンスをつかんだ菅原さん。
菅原さんがインターンを行なった年、チームはUSオープンカップを制し、優勝という最高の瞬間にも立ち会うことができたそうです。
▶︎右上段が菅原さん。スポルティング・カンザスシティーにて

それまでは“プロの選手というのは絶えず努力し続けていて、みんな一流なんだ”と漠然と思っているところがありましたが、実際はプロ選手の中でも厳しくコミットして代表レベルで活躍する人もいれば、だんだんと落ちていく人もいて、プロレベルでプレーする人たちの中でも差があるんだな、ということを肌で感じました。
アスレティックトレーナーのキャリアをスタートしてすぐに、夢だったプロサッカーの環境に身を置き、チームの最高の瞬間も経験し、多くの学びを得たといいます。
世の中で一番頑張っているのは・・・


そんな時、たまたま知人の方から誘われて脊髄損傷の方のトレーニングを行なっている施設に見学に行く機会がありました。
最初はそこまで深く考えずに気軽にうかがったのですが、そこで思いがけない刺激をたくさん受けました。
それまで世の中で一番頑張っているのはプロのアスリートだと思っていたけど、脊損の人たちのトレーニングはプロと同じくらいすごかった。
自分が知らなかっただけで、世の中にはめちゃくちゃ頑張っている人たちがいる。
そんな衝撃を受けたと話してくださいました。
菅原さんは結果、その施設に就職され、4年勤務されたのちに現在のように独立されました。
リソースが少ないからこそ、自分がやる意義がある

でも、障がい者を対象とした情報やリソースはほとんどありません。
日々、もう一度歩けるようになりたい、よくなりたいと人生をかけている人たちがいる。
そういう人たちに、少しでも体の変化を感じてほしいと思ってこの事業を立ち上げました。
誰もやっていないからこそ自分がやる意義がある、と考えています。
菅原さんも、独立後は数ヶ月先の生活が保障されているわけではないことなど、不安を感じることもあるそうです。でもそれはきっと、どんな人も少なからず抱えていること。
先のことは誰にもわからないけど、これまで培った自分の知識とスキルを「有益なサービス」として世の中に広めるために、ないものは自ら作り、切り開いていく!と、思いを形にしてもくもくと前に進んでいる菅原さんを、人として、アスレティックトレーナーの先輩として、とても尊敬します。
生活を一変させる変化を一緒に見られる喜び
▲菅原さん(右)とクライアントの女性(左)。いい笑顔!


一緒にトレーニングをしていて、クライアントさんがそれまでできなかったことができるようになる瞬間は、何事にも変えられない喜びを感じます。
たとえば、それまで一人でできなかった寝返りができたり、起き上がり動作ができるようになったということは、運動して体重が5kg減ったとか、スタイルが良くなった・・・というものではなくて、その人の生活、人生を一変させるような出来事なんですよね。
そんな変化が見られた日は、クライアントさんも僕も一緒になって喜びます。トレーニング指導の帰り道なんてもうルンルンスキップですよ(笑)。
菅原さんの熱のこもった話しぶりから、いかにその瞬間が貴重で、かけがえのないものかが伝わってきました。
障がい者専門のパーソナルトレーナーは、人生をかけて日常生活動作を獲得しようと奮闘する人に寄り添い、一緒に目標に向かって歩いてくれる心強いパートナーです。
「背中を押す」こと


自分はあくまで「背中を押す」存在だと思っています。
障がいを持っている人は、何をするにもなかなかチャレンジしづらい環境にあるんです。そんな環境でも僕はチャレンジする人の背中を押してあげる存在でいたいのです。
そしてその為には、その人に対して本当にいいことを考える。
感覚麻痺がある人でも、その人の感覚や感性を出来るだけ把握し、短期的視点と長期的視点の両面で考え、身体にとって本当に良いことを届けると決めています。

未知の食べ物もとりあえず食べてみる。食べてまずかったら、これはもう食べない!でいい。
それと同じで、とりあえずやってみる。
やってみてダメだったら、そこからまた考えればいい。
どんな小さいことでも良いからチャレンジしてみる。もし一人でチャレンジできなさそうなら他人に頼ってもいい。
その時僕は、そんなチャレンジする障がい者の方の背中を押せる存在でありたいです。
そしてまた僕自身もチャレンジを続け、行動してよかったと思えるようにありたいと思っています。
まとめ
障がい者専門のパーソナルトレーニングUniversal Training Center菅原さんは・・・
- サッカーのAT目指して渡米、ATCに
- 縁あって見学した施設で、プロアスリートと同じくらい頑張っている障がい者の方々の姿に感銘を受ける
- 思いを形に、ないものを切り開くために独立
- 障がいを持つ方にも体の動かし方を知ってもらいたい
- できなかったことができるようになる喜びを一緒に味わう!
インタビューの最後では「僕が与えているみたいになっているけど、実際はクライアントさんから勇気をもらったり、学ぶことが多いんです。きっと自分にもできるはず、と僕も同じように焦らずに頑張っていこうと思っています」と締めくくってくださいました。
菅原さん、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました!
障がい者のトレーニングに関する情報もアップ
▶︎Universal Training Centerのサイト
▶︎Universal Training Centerのツイッター
▶︎Universal Training Centerのフェイスブックページ
菅原さんのことをもっと知りたい!
▶︎福祉情報サイトWelSearch(ウェルサーチ)のインタビュー記事
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ゆうこりん

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