運動指導ノウハウを生かし、沖縄で「まちづくり」に参画。アスレティックトレーナー高橋烈央さん

こんにちは。ゆうこりん(@koji_i003)です。

アスレティックトレーニングやトレーナー活動に関心のある方であれば、

「運動やスポーツを通して、人々が健康な暮らしを送れるように」

というテーマに対し、何らかの形で自分の持つ専門性や知識を活かして貢献したい。という気持ちを抱いている人も多いのではないでしょうか。

ゆうこりん
その切り口が、人によっては「トレーニング指導」だったり、「コンディショニング」や「教育的な関わり」だったりするんですよね。

スポーツ医学の専門家として、トップアスリートだけでなく一般の方にも還元できる方法は、アイデアの数だけあるといえます。

今回は、健康・スポーツのトータルコンサルティングを行う会社の社員として、出向先の沖縄県うるま市にある健康福祉センター「うるみん」に勤務されているATC(アメリカのアスレティックトレーナー)をたずねました。

地域活性をはかる地元企業からスポーツ施設運営のノウハウを一任され“まちおこし”の一環として人口約12万人の地域のヘルスプロモーションに取り組む運動指導のプロは、いったいどんな仕事をしているのでしょうか。

▲うるま市は沖縄県のちょうど真ん中あたりに位置します。

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健康福祉センター「うるみん」から”健康なまちづくり”を発信するアスレティックトレーナー

ゆうこりん
こんにちは。「うるみん」、とても大きな施設ですね!今日は色々お話聞かせてください。
れおさん
はいさい!よく来たね。どうぞ!

すっかり沖縄県人のような挨拶で元気よく迎えてくださった高橋さん。

しかし「タカハシさん」は今後何人かかぶりそうなので(笑)、ふきだしでは普段の呼び名である「れおさん」と呼ばせていただきます。

高橋さんのプロフィール

名前:高橋烈央(たかはし・れお)

経歴:新潟県新潟市出身。

高校卒業後、アメリカのネブラスカ州にあるネブラスカ大学カーニー校に進学。

アスレティックトレーニングを学び、ATC取得。

2011年に帰国後より株式会社パーフェクトトレーナーズ入社。

滋賀県の整形外科にてリハビリアシスタントや、施設運営事業部統括として近畿圏の大学内フィットネスセンターなどに出向する傍ら、2014年より同社の企画開発営業職に就任。

2017年より同社の沖縄営業所開設にともない、現在の勤務地である沖縄県うるま市に赴任。

市の健康福祉センター「うるみん」を拠点に、地域のアスリートへトレーナーサポートや、新規事業開拓、イベントの企画、健康事業のコンサルティングなども幅広く手がける。

資格:
BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)
認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)

沖縄の健康福祉センターで働くATCの仕事とは?

ゆうこりん
まず、今の仕事内容について詳しくお聞きする前に・・・こないだまで滋賀にいたのに、どうして沖縄で働くことになったんですか?
れおさん
まず、うるま市のまちづくりの会社である一般社団法人プロモーションうるま(以下・プロモうるま)が市から受託して「うるみん」を管理することになったのですが、同社だけでは運動や健康に関するノウハウが不足しているということで、僕の所属する会社パーフェクトトレーナーズ(以下・PT)が提携することになりました。

そこで僕がPTから出向という形で現地に赴任し、実際に運動指導を行いながら、少なくない税金が投入されているこの施設を有効活用し、市民に還元できるように様々な企画や営業、コンサル業務などを行なっています。

なるほど。この施設内で利用者にただ運動指導をする・・・というような、単純で受け身の仕事ではないということがすぐにわかりました。

さらに、プロモうるまとの提携に至る背景などがよくわかる、ウェブメディアの記事をシェアしてくださいました。

れおさんも取材を受けて記事内に登場しています。

これを読んでからのほうが、人口の減少など様々な地域の問題解決に向けて起業した地元の方々の情熱と、そこへやってきた有能な助っ人・れおさんの役割がよくわかると思います。

「運動をからめて健康寿命を延ばす」というミッション

ゆうこりん
「うるみん」の利用者はどんな方が多いですか?沖縄の方って、なんとなく長寿なイメージです。
れおさん
それが、沖縄県は65歳以下の死亡率が全国1位なんです。うるま市の男性は、65歳までに1/4が死亡するというデータも出ています。

「うるみん」の利用者は地元の高齢者や夜には小・中・高校生も来ますが、働き盛りの40代の方などにも多く利用してもらえるようにイベントを企画したり、足を運んでもらえるための色々な仕掛けを作るようにしています。

▲施設の壁に貼られたポスター。
3ヶ月定額で、週に1回の集団トレーニングやカウンセリングも受けられるダイエット企画

  • 個別ストレッチ
  • グループレッスンの指導
  • 30分1000円の個人セッション
  • 施設内でのイベントの企画・運営
  • 施設のマシンや設備のマネジメント

など、「うるみん」の運営に関わるすべての業務に、責任を持って取り組んでいます。

れおさんが出向し「うるみん」の運営を改革するようになってから、利用者の数は大幅に増えたそうです。

ターゲットに合わせた運営方法を計画

れおさん
まだマシンも少ないけど、今後もっと充実させていく予定です。

高齢者の方の利用が多いので、安全面も考慮しウエイトではなく空気圧で負荷をかける『カイザー』の導入も決定しました。

また、若い人も来やすいように「朝活」利用なども提案しています。

元・プロスポーツ選手を呼んだセミナーなども企画しましたね。

理想は、ここを「まちのアスレティックトレーニングルーム」みたいにしたいと思っています。

▲「うるみん」のトレーニング室。

▲エントランスそばの広い吹き抜けスペース。
「ここにマシンを置くための申請が先日通りました。隣の壁をボルダリングウォールにもしたいんですよね」
と、熱心にビジョンを語るれおさん。

▲トレーニング室の一角にトリートメントテーブルがあります。

▲個室になったオフィスにもトリートメントテーブルがあります。

仕事は「うるみん」の外にも多数

ゆうこりん
仕事のスケジュールはどんな感じですか?
れおさん
週5でここ「うるみん」、あとは週1で沖縄尚学のテニス部のアスレティックトレーナー、それからもう1日は営業に出ています。

あれ?休日はどこ・・・?

そんな野蛮な質問は、笑顔で右から左へと流されました(笑)。

れおさんの見据える世界の話に耳を傾けていると、「仕事に追われる」のではなく「自分からどんどん仕事を探し、捕まえにいっている」といったほうがふさわしいように思えます。

(補足:もちろんちゃんと休みもありますよ!)

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沖縄尚学テニス部をサポート

▲施設内に貼られた新聞記事。

アスレティックトレーナーとして、学生スポーツのチームサポートもされているれおさん。

施設の運営から一般の人への運動指導、行政とのやりとり、営業、企画、コンサル、そしてチームサポート。

誰でも彼のようにこれら全ての役割をうまくできるわけではないかもしれませんが、アスレティックトレーナーって、スポーツを根っこにして木が枝葉をぐんぐん広げるように、あらゆる方面で多角的に活躍できるポテンシャルがめちゃくちゃ高いと思います。

沖縄尚学テニス部には、週に一度トレーニングとリハビリ指導を行っているとのことでした。

“ニューワールド”の開拓

▲仕事終わりにじっくりお話しを聞かせていただきました

ゆうこりん
先ほど「営業に行く」とおっしゃっていましたが、どんな営業をするんですか?
れおさん
簡単にいえば、「新しい分野」の開拓です。先日はホテルにプレゼンに行きましたよ。

ひとつ仕事があれば、そこには必ず働いている「人」がいます。

そこにスポーツ医学の専門性が掛け合わされることで、より健康で、より豊かな生活文化が生まれる「新しい分野」の開拓。

ここでいう「新しい分野」を「ニューワールド」と呼ぶそうです。

アスレティックトレーナーであるれおさんのもうひとつの顔は、『健康スポーツコンサルタント』

すでにある運動施設やチームとの仕事をこなすだけでなく、たとえばホテルや航空会社といった”他業種”とも提携し、健康ツーリズムの専門家や大学教授と「そこで必要なことを一緒に考える」のも大事な仕事です。

れおさん
僕が今やっているのは「仕事を作る仕事」。これをしないと業界はどんどん狭まっていくばかりで、仕事を奪い合って結局価格を下げるだけの競争になってしまう。

ATCが帰国してもなかなか仕事がない・・・という話もよく聞かれますが、仕事を作れるようになっていれば、最終的にやりたいことをやれるんじゃないかなと思います。

アスレティックトレーナーが社会に提供できる価値は、スポーツやフィットネス産業の中だけにとどまらない。

れおさんのお話を聞いて、改めて自分には何ができるか考えされられました。

「仕事の作り手」としてのビジョン

ゆうこりん
れおさんは、以前からこういった仕事に興味があったんですか?
れおさん
そうですね。もともとプロスポーツで働きたいとか、あまりそういう気持ちはありませんでした。

どちらかというと、もっとアスレティックトレーニングを広めることに興味があった。プロスポーツの世界では”トレーナー”という存在は知られていることが多いけど、もっとまちの人に浸透させたいという思いがありました。

そう考えるようになったきっかけとして、アメリカで出会ったあるATCの存在があったそうです。

その人はクリニックからのアウトリーチで街のスポーツイベントなどを全てカバーしており、どこに行ってもみんなが知っていて頼りにしていた、とのこと。

アスレティックトレーナーが街に溶け込んでいる様子とその影響力を見て、そのような概念をいかに日本の社会にも持ち込めるかを考えていたというれおさん。

今の仕事はまさに、学生時代の情熱を形にする取り組みなのかもしれません。

▲「僕もずっとここにいるのではなく、立ち上げに来たという役割なので
地元の人をしっかり育てていずれ引き継ごうと思っています」

やりたいところに行くのではなく、求められているところに行く

ゆうこりん
では、仕事をする上で「大切にしていること」は何かありますか?
れおさん
そうですね・・・。やりたいところに行くのではなくて、求められているところに行く。ということでしょうか。

やっぱり相手がいる仕事なので、ニーズがないといけない。そこにやりたいことが重なった時に相乗効果が生まれると思っています。

自分も、相手も、さらに第3者にとっても利益がある、win-win-winの関係性を大事にしています。

人が考えもしないところに、専門職を置く。

仕事を作っていくための仕掛け作りや、全く違う分野の勉強も積極的にやっていると話してくださいました。

理想は、トレーナーという職がなくなること

ゆうこりん
将来はこうしたい!みたいな理想はありますか?
れおさん
理想をいえば、“トレーナー”という職がなくなればいいと思っています。トレーナーがいなくても自己管理ができて予防がすすみ、アスレティックトレーナーは何もしなくていいという状態が最善。

でもそのためには、健康を損なう前に予防の概念を広めなくてはいけない。

だから今、需要が成り立つという矛盾ですけどね。

新しい仕事を開拓しながらも、アスレティックトレーナーとしての理想はそれが必要なくなることだ、と語るれおさん。

この一見ありふれた質問に対してこのような答えがすっと出てくるところから想像すると、目の前の仕事に全力で取り組みながらも、常に自分の理想や長期的な視点を頭の中のいつでも取り出せる場所にしっかりと据えて行動しているんだろうなと感じました。

▲れおさんのパーソナルを受けた利用者さん(左)が、目標としていたハーフマラソンを完走した時の1枚。
2人ともいい笑顔!

まとめ

ゆうこりん
実際に「うるみん」を訪問してれおさんの話を聞くまでは、地方の健康福祉センターでトレーナーとして勤務するって、アメリカや国内の設備が整った大学や施設を経験しているATCにとっては少し物足りなかったりするんじゃないかなあ、なんて勝手に思ったりしていました。

だけど、地方創生のために長期的なビジョンと情熱を持って生まれた地元企業と、健康・スポーツのコンサルティングの専門性がタッグを組むと、こんなにも可能性にあふれたチャレンジができ、それが一つずつ形になっていくんだ、と胸が熱くなりました。

めちゃくちゃ面白いお話がたくさん聞けて、できるだけ記事に盛り込む努力をしましたが到底すべては書ききれません!

自分のやりたいことを純度高く実現するためには、結局独立するしかないんじゃないかと私は考えていました。

しかしれおさんは、話だけ聞いているとまるでスタートアップの社長さんのような目線で仕事をされているように感じますが、彼はいわゆる「会社員のアスレティックトレーナー」です。

自分がやりたいことをやれるかどうかは、結局その人がどんなビジョンを持ってどんな仕事をするかが大事です。

むしろ行政にアプローチして地域規模でムーブメントを起こすような関わりができるのは、個人ではなく「企業」レベルの信頼と実績があるからだともいえるのではないでしょうか。

沖縄で「まちづくり」に参画する健康コンサルタント/アスレティックトレーナーは…

  • 地域に運動と健康のノウハウを提供する有能な助っ人
  • 様々なイベント企画と運営で全世代を元気に!
  • マルチタスクをこなすビジネスマン
  • 「仕事を作る仕事」を実践
  • あたたかい利用者さんたちから差し入れてもらったおかずを食べて生活←NEW!

れおさん、たくさんアツいお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

れおさんのツイッターアカウント☞@Reo_A_TakahaC

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ゆうこりん

BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)でもある整形外科看護師です。 スポーツ医学やアスレティックトレーニングをテーマに空き時間に気軽に読めるメディアを運営。スポーツイベントの救護、スポーツ医学関連団体の広報担当などの活動も行なっています。 内科・耳鼻科・眼科混合病棟→米大学院→スポーツ整形外科。

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BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)でもある整形外科看護師です。 スポーツ医学やアスレティックトレーニングをテーマに空き時間に気軽に読めるメディアを運営。スポーツイベントの救護、スポーツ医学関連団体の広報担当などの活動も行なっています。 内科・耳鼻科・眼科混合病棟→米大学院→スポーツ整形外科。