『月刊トレーニング・ジャーナル』創刊号は、トレーニング医科学の歴史を示していた。

こんにちは。看護師/アスレティックトレーナーのゆうこりん(@koji_i003)です。

突然ですが、アスレティックトレーナーやストレングスコーチ、スポーツ指導者などが愛読している「トレーニング関連の専門誌」といえば、なんでしょうか?

おそらく、真っ先に思い浮かぶのはみなさんご存知『月刊トレーニング・ジャーナル』だと思います。

ブックハウスHDの公式サイトより引用

では、この雑誌が初めて発行されたのはいつなのか、ご存知の方はいますでしょうか。

ゆうこりん
現在のトレーニング・ジャーナルのキャッチコピーが「パフォーマンス向上を支えるスポーツ医科学専門誌」ですよ。

テーマから予測すると、創刊は15年くらい前かな?と私は思っていました。

ところが実際は、私自身が生まれたのがこの雑誌よりあとでした・・・。先輩!!

今回、『月刊トレーニング・ジャーナル』編集部に保管されている創刊号を見せていただく機会があったので、ぜひ皆さまも一緒にその貴重なコンテンツの一部を楽しんでいただきたいと思います。

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1979年創刊。『月刊トレーニング・ジャーナル』の歴史

▲こちらが、『月刊トレーニング・ジャーナル』創刊号です!!

『月刊トレーニング・ジャーナル』は、今から39年前の1979年10月に創刊されました。

価格は500円。

現在の値段が700円+税なので、物価の上昇なども考えるとあまり値上げしておらず、今のトレーニング・ジャーナルってめっちゃ良心的な価格なのではないでしょうか。

この表紙や特集テーマから、雑誌創刊に詰まった思いがさっそく色々と読み取れる気がします。

アメリカのスポーツ現場における実践などを紹介していた

創刊号の表紙のモデルとなっているのは外国人アスリート。

そして「トレーニングを考えなおす」と銘打たれた特集は、

  • アメリカのトレーニング・シーン
  • 日本レスリング、世界選手権に向けて
  • 高校野球、その新しいトレーニングへの動き

というタイトルがそれぞれつけられています。

現在のトレーニング・ジャーナルは主に日本の様々なセッティングで活躍されているトレーナーや指導者の取り組みなどを取り上げておられますが、創刊当時はアメリカなど海外での実践や研究を参考にして「世界レベルのトレーニング科学を取り入れ、日本のスポーツを強くする」情報誌をつくるんだ、といった意気込みが感じられるようです。

昔はトレーニング・ジャーナルが唯一の情報源だった

創刊号につまったトレーニング業界の歴史に感激しながら夢中でページをめくり、案内していただいた編集部の浅野さんとお話していると、

「ご年配の方に取材でうかがったりすると、“昔はトレーニング・ジャーナルが唯一、情報を得られる場所だった”と言ってくださる方がとても多いんですよ」

と教えてくださいました。

確かに今では一人1台ポケットに小さなパソコンを持ち歩いているような時代で、SNSなどを通して日本全国、あるいは世界を舞台に活動している人たちの様々な取り組みを知ったり、そのような人々と物理的な接点がなくてもコミュニケーションをとることもとても簡単にできるようになりました。

しかし今から39年前、まだ「誰もが手軽に発信者になれる時代」ではなかった頃においては、トレーニング科学を専門的に取り扱うメディアの存在は本当に貴重なものだったに違いありません。

創刊号から注目記事をピックアップ

▲NFLピッツバーグ・スティーラーズのサマーキャンプのトレーニングに関する記事。

私は2014〜2016年の間アメリカに留学してアスレティックトレーニングを学んだのですが、そこで見たり習ったりしたことと照らし合わせて記事を読むと、より「流れ」を感じられる気がして、もう本当にページをめくる手がとまりませんでした。

せっかくなので、当時のトレーニング医科学の実践をいくつかご紹介させてください。

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ピッツバーグ・スティーラーズのサマーキャンプの記事

ピッツバーグ・スティーラーズのサマーキャンプの様子を紹介する記事の中で、次のような記載があります。

朝食後、まず全員がトレーナー・ルームへ足を運んでテーピングをする。プロでは試合、練習とも「足首のテーピング」が義務づけられ、もしケガをしてテーピングをしていなければ250ドルの罰金というルールがある。

こんなルールは日本のどのチームにもない。テープ代も高いがケガをするよりは安くつくという考え方でもある。

アメリカのフットボールでの、ケガの予防に対する厳しい姿勢がうかがえますね。

現在でもこのように「全員足首のテープは義務」「もししてなくてケガしたら罰金」というルールがあったりするのでしょうか?

NFLチームでインターンをした経験を持つ日本人ATCの方々のお話を聞く機会もありますが、「義務」や「罰金」というワードは初めて見ました。

足首のテーピングをしていたら絶対にケガしないというわけではないので、今はそこまで強制力を持つものではないのかもしれません。

アメリカのコーチの資格制度と地位について

次に、「アメリカのコーチやトレーナーは理論に支えられた仕事をしているか」と題された記事からの引用です。

(前略)しかし、アメリカで高校生を指導しているコーチは、トレーニング全般に関して、基本原則を理解するため、大学で専攻科目とは別に、アスレティック・マイナー、つまり対校競技副専攻を習得しなければならず、その意味では一応専門家であるいえるでしょう。

高度な理論がこのコーチ全員に理解され実践されているわけではないでしょうが、制度として、コーチあるいはトレーナーが何らかの形で資格を取っていないと実際にその仕事に携われないということは、それなりに意味のあることです。

高校でコーチすることがひとつ立派な職務として成り立つ、これが日本とはちがっています。日本では篤志家や好きで教えている人が多い。これにはいろいろな事情がありますが、アメリカの場合は、資格を取らなければコーチになれず、また資格を取ることで給料も上がってくる。大学フットボールのコーチでも優秀な人は、社会的にも専門家として尊敬され、学長と同じくらいの年収を得るほどです。

39年前と、今と、日本とアメリカの競技コーチの制度の差はあまり変わっていない気がします。

日本版NCAAの実現へ向け今様々な取り組みが行われていますが、まだまだ卒業生や父兄のボランティアか、教員が主に指導者の役割を担う日本の学校スポーツの状況は、今後どうなっていくのでしょうか。

「創刊にあたり」寄せられたコメントから

創刊にあたり、各領域の専門家たちから今後のトレーニング・ジャーナルへの期待や取り扱うトピックについて、コメントが寄せられているページがあります。

これらのトップランナーたちが語る言葉のなかに、この時代のスポーツ医科学のあり方を垣間見ることができるような気がして、このページもじっくりと読んでしまいました。

ここでは当時、順天堂大学教授だった故・石河利寛氏からのコメントを引用させていただきます。

(前略)現在多くの人のトレーニングの目的は健康の増進であって競技力の向上ではない。この点でトレーニングは医学と密接に結びついていて、医学の知識の乏しいトレーナーは役に立たない。

トレーニングの処方を誤るとかえって健康を損なうことがある。したがって科学的な立場からトレーニングを実施すべきで、単に猛烈にトレーニングをすればよいというわけではない。

このような点を考えると医学や生理学の知識はトレーニングを行う場合に不可欠である。

運動生理学、スポーツ医学の第一人者から、『月刊トレーニング・ジャーナル』が、科学に基づいたトレーニングの分野を牽引していく雑誌として成長することを期待する言葉が並んでいます。

この文章から39年後の今では、実際にスポーツ医科学分野におけるトップの専門誌として、多くのトレーナー/指導者らが知見を得たり共有したりする場になっていますよ・・・と、未来からきたターミネーターのごとく伝えてあげたくなります(余計なお世話かもしれませんが)。

また今では、トレーニングの目的が競技力向上のためであっても、解剖学や生理学、栄養学などを含め医学的な知識が必要である認識は広まってきているように思います。

まとめ

ゆうこりん
1979年当時では、ここまで最先端のスポーツ医学やトレーニング科学に特化した雑誌はとても珍しかったそうです。

まさに、『月刊トレーニング・ジャーナル』の歴史はスポーツ医科学の歴史と言えるのではないでしょうか。

さすがにもう市場で入手することは困難なこの『月刊トレーニング・ジャーナル』創刊号、もし所属先や誰かが保管していたら、ぜひ手にとってみてください。

▶︎ブックハウスHDの公式サイト

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ゆうこりん

ゆうこりん

BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)でもある看護師です。 現在は整形外科で病棟看護師として働きながら、スポーツ医学やアスレティックトレーニングをテーマに空き時間に気軽に読めるメディアを運営。休日にスポーツイベントや大会の救護などの活動も行なっています。 内科・耳鼻科・眼科混合病棟→米大学院→スポーツ整形外科。

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BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)でもある看護師です。 現在は整形外科で病棟看護師として働きながら、スポーツ医学やアスレティックトレーニングをテーマに空き時間に気軽に読めるメディアを運営。休日にスポーツイベントや大会の救護などの活動も行なっています。 内科・耳鼻科・眼科混合病棟→米大学院→スポーツ整形外科。