こんにちは。ゆうこりん(@koji_i003)です。
2019年5月11日(土)、12日(日)と幕張メッセで開催された、第10回 WFATT 2019 ワールドコングレス東京が無事に終わりました。

▲これは金曜日の準備。
あんまり大変そう感はない・・・!?
そんなこんなで、ただの「学会参加レポート」みたいな気軽なノリではもはやこのワールドコングレスのこと書けそうにない、と思っていたらあっという間にもう終わってから2週間以上経ってしまいました。
一応運営側という立場的にも、いろんなことに配慮してやっぱり全体を網羅したまとめみたいな記事を書きたいと思いつつ・・・当日はほとんどゆっくり講義も聞けなかったので、バランスよく内容をまとめようとしても難しくて、なかなか書き出せずにいました。

このままいくとちゃんとした記事どころか、何も書かないまま、この機会で考えたことも経験したことも、全部忘れてしまう・・・!
もう全体を網羅した内容でなくていいから、私の個人的なバイアスしかない振り返りを書こう。
ということで、実行委員だったくせに全然2日間の国際学会の内容を網羅した記事ではありませんが(笑)、私目線で自由に書きます。
気軽な気持ちで読んでみてください。
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目次
手作りで国際学会の運営って大変
▲この「インスタフレーム」も、作りたいぃイ!!って言ったら本当に作ってくれました。
ノリのいいJATO理事のみなさんに感謝
いきなり当日の話に入るまでに、せっかくなので準備期間のことも少しお話させてください。
というのも、私は主に広報部門で公式ウェブサイトを作成/運営したり、資料を作ったり、チラシや画像を作ったりと、当日を迎えるまでにやる仕事がメインでした。
なので私のWFATTへの取り組みは、無事に当日を迎えた時点でほとんど終わりに近いような気持ちでした(とか言ったら、当日走り回ってたくさん責任のある仕事をしてくださった他の理事や委員の皆さんに申し訳ないので、あまり大きい声では言えないのですが・・・)。
試行錯誤の運営とオンラインの仲間
JATOの上松会長のこのコングレス開催にかける思いを聞いてチームにjoinすることに決めたのが、去年の夏ごろ。
前年度に初めてJATOの「運営側」として参加したシンポジウム委員の活動とは、規模感もなにもかもが違うことは最初からわかっていました。
みんなももちろん最初は手探りなので、色々と「蓋を開けてみなきゃわからない」ことはたくさんありました。
個人的には、こういう試行錯誤はすごく楽しかったし、とても勉強になりました。
普段の病棟勤務の仕事では、答えのないものへ少人数で”戦略”を練ったりする機会なんてほぼありません。
方向性を決めるために全く違う観点を持つ人たちで意見を出し合って議論するっていうのも建設的で、私はとても好きでした。
ウェブサイト作成(&その他)の作業に追われすぎて、ストレスで死にそうになっていたときが何度かありましたが、同じくJATO会員で状況を理解してくれる夫と、信頼できるJATOメンバーに支えられ、なんとかサイトを無事にローンチし、申し込み受付が開始できたときは「祭り」のような一体感と達成感がありました。
夜勤にパソコンとポケットwifiを持参して、文字通り本業の合間に作業した日もありました。
▲シルバーのアクセントがイケてるパンフレット
このチームでは、アスレティックトレーナーとしての仕事のステージや年齢で優劣はなく、誰がどんな意見を言おうと生意気ではないし、目指す成果に向けて一人一人が考え、行動することがもっとも重要でした。
そういう心意気で提案したことに、真摯に応えてくれるリーダーの姿勢から多くを学びました。
委員の活動は基本的にLINEのトークで行なっており、チームメンバーと直接顔を見て話す機会は数えるほどしかありませんでした。
でも、業務が具体化するにつれ作業ごとの少人数グループも乱立し、数時間あくとLINEの未読が100件とか普通にたまっちゃうくらい日々連絡を流し合っていたので、特に密に相談しながら作業を進めていたメンバーのことはもう本当に身近に感じていました。
とはいえ、終わってさみしいかと言われると・・・やっと落ち着いてほっとしているのと、実は今も委員でまとめの作業を分担してやっているのもあり、全然ですねw
『Exercise For Total Health』

今回のコングレスでは、各キーノートスピーカーの講演内容からもわかるように、アスレティックトレーナーが、産業界やアーミーなどといったいわゆるオーソドックスなスポーツ現場以外の環境で、どのように専門性を発揮し、人々の健康とパフォーマンスを向上させ、その価値を認められてきたかというような、これまであまり語られる機会が少なかった知見の共有をメイントピックとしていました。
大会テーマは『Exercise For Total Health』、日本語になおすとすれば『全人的な健康のためのエクササイズ』といったところでしょうか。
2日間で総勢15名の講師の皆様にご登壇いただきましたが、そのどれもが技術的な講義ではなく、それぞれの立場や経験から語るアスレティックトレーナーの未来や可能性といった、精神性、哲学、情勢、専門性・・・といったような切り口からの話だったかと思います。
はじめてFMSの根底にある「WHY」を知った
1日目の基調講演のFMS(Functional Movement System)の創始者であるLee Burton氏の講演は、とても感銘を受けました。
私もアメリカでATを学んでいたとき、FMSをリハビリか何かの授業で習いました。
帰国してからジムでパーソナルトレーニングを受けたときも、最初の評価で活用されていました。
でも、私はBurton氏のこの話を聞くまで、FMSの本当の価値を全然わかってなかったと衝撃を受けました。
▲写真引用:WFATT公式フェイスブックより
私は、FMSって、その人の体のバランスが悪いところや弱い部分を見つけて、オーダーメイドのトレーニングプログラムを作るための評価をするツールみたいなものだと思っていたんです。
でもそういう解釈はすごく表面的だったと思い知りました。
2日目の高谷温子氏の講義で話されていた考え方を引用して表現するなら、FMSがうまれた「WHY」はそこじゃないなって。
Burton氏の話では、FMSは大勢いる対象者の集団の中から、より積極的な介入が必要な個人をスクリーニングするために有効なシステムとして作られたということでした。
正しく体が使えていない人は、このままタスクを続けさせると怪我をするリスクが高く、会社にとって”コストが高くつく”ようになる。
そのような「ハイリスクな個人」を早く発見し、早期に介入することによって、会社にとっても、その人自身にとってもよい結果になる。
限られたリソースを効率的に使い、集団全体の健康と生産性を高く保つことができる、という理念が根底にありました。
医療でいう「トリアージ」のような考え方ですね。
今までの私は、ATが目の前のクライアントにどんなサービスを提供できるかという、個人目線でしか、このようなツールやスキルのことを見ていなかったと思います。
「選ばれるATになるために、どんな武器を身につけるか」みたいな。
そういう視点でいうと、なるほどFMSなどのシステム化された手法のコースを受講して、認定資格を取って引き出しに加えることは、自分のキャリアとパフォーマンス向上にとって有効ですね。
でも、FMSを構築した張本人たちが見据えていたビジョンというものは、そんな小さい話じゃないんですよね。
集団が高い生産性とパフォーマンスを維持するために、アスレティックトレーナーがその専門性を生かして介入するために洗練された、非常にシステマチックな手法なんです。
傷害のハイリスク群には、それが起こってしまう前に修正(予防的介入)を。
今のままでうまく体を使えている人は、現状維持とさらなる健康増進を。
“Where is your best opportunity for success?”
▲写真引用:WFATT広報部門より
「First considerはIndividual’s healthだ」と彼は言いました。
つまり、そもそもの生活が健康じゃない人には、まず「1日に何本もレッドブル飲むは辞める」とか、「禁煙する」ことのほうが、正しいトレーニング方法を指導するよりよっぽど彼らの健康状態とパフォーマンスをよくしますよ、という話です。
実に合理的で、多くの人にとって有益な理念だと思いました。
まさかFMSの話(というわけでもないのですが)で、生活習慣の改善の方がよっぽど大事やろ、みたいな話が出るとは思ってもいませんでした・・・。
いつでも彼らはBig pictureを捉えながら物事を考えているのですね。
私は運動指導を生業にはしていませんが、創始者の口から語られる「WHY」を聞いて、FMS勉強してみたいなぁって本気で思いました。
Lee Burton氏の話し方もとても簡潔明瞭で、プレゼンテーションとしてとても魅力的だったというのも、話にどんどん引き込まれ、メッセージが心に響いた一因だったと思います。
素晴らしい話は伝え方も大切だということも、改めて実感しました。
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産業に適用できるスポーツ医学モデル
▲写真引用:WFATT公式フェイスブックより
さらに、アメリカのボーイング社で働くアスレティックトレーナーを管轄するMartin Matney氏による基調講演も非常に貴重なお話で、聞いていて本当に感銘を受けました。
もしこの記事を読んでいて、当日WFATTに参加してお話を聞かれた方がおられたら、ぜひどう思ったか感想を聞いてみたいです。
彼の話を聞いて、あなたはどう思いましたか?
労働現場において、もっとも多い整形外科的な労災は「Sprain/Strain(ねんざ/肉離れ)」だそうです。
テキサス州のある消防局では、アスレティックトレーナー1人を雇い傷害予防に重点を置いた介入したことによって、職員の労災にかかるコストを年間$593,692(約6000万円!)削減することができた。
またコスト面だけでなく、傷害による休職率を大きく減少させることができた、という話がありました。
その一人のアスレティックトレーナーに支払った1年間分のお給料を差し引いても、すっごい利益が出た計算になりますね。
彼が紹介してくれたデータはアメリカの保険制度に基づいた情報なので、そのまま日本に持ってきて、同じ金額のコストカットになるとは言い切れませんが、いかに傷害が起こる前に予防的な介入をすることが経済的かを理解するには十分すぎる成果でした。
自分たちがやってきたことを、ちゃんと数値化して人に提示できるようにデータをとってまとめているというのが、さすがアメリカ人らしいなとも感じます。
Martin氏はMBAも取得されていて、自身で会社も経営されているので、そのへんのマーケティングスキルも”現場の職人”的ではなく、一流のビジネスマンであるという印象でした。
一朝一夕で結果と実績が出せるような簡単なものではないですが、地道に正しいことを積み重ねた結果、彼らの今の社会でのポジションがあるのだなぁと思わされるお話でした。

アスレティックトレーナーによる産業界への介入は、とても未来があると強く思いました。
まとめ
▲めちゃくちゃ仕事してチームを率いてくれたJATO理事のみなさんと実行委員メンバー
WFATTについて書きたいことはそれはもう湯水のようにあるのですが、あんまり書きすぎると読む方も疲れると思うので、あまり詰め込むのはやめておきます笑。
私にとっては長い準備期間も含めて、アスレティックトレーナーとして看護師としてそしてひとりの社会人として、様々なことを考えて、感じて、学んだ素晴らしい機会がこのWFATTワールドコングレスでした。
余談ですが、参加者のみなさんにお配りする記念品を作ろうという話になったとき、私はどうしてもウォーターボトルが作りたくてすっごくアピールしていたら、その意見を採用していただきあのボトルができました(こんなボトルなんかいらんわい!って人ももちろんいると思いますよ。ごめんね。てへぺろ)。
予算には限りがある中で、チームであーでもないこうでもないと相談しながら、最終的にとってもかわいいデザインに作っていただけて、とても嬉しく思います。
私も仕事中にこれで水飲んでます。
▲まやさんのフェイスブックの写真をお借りしました。
ボトルの色はランダムですが、クリアが一番レアです
海外の方には日本らしい扇子をお渡ししました。
これらは特にチケット代に含まれているなどという計算ではなく、完全に自由に作ったプレゼントなので、喜んでいただけるといいなと思います。
最後に。
心を打たれたメッセージはいろんな方の口を借りて届いたのですが、中でも特に私の心に響いたのは、TMG Athletics代表の中山佑介さんがおっしゃっていた「レジュメに書けることだけがあなたの価値ではない。社会に貢献できる、あなただけの価値が、誰にでも必ずある。」という言葉でした。
私は別にアスレティックトレーニングの特定の分野の専門家でもなんでもありません。
素晴らしい成果をあげたことがあるわけでも、何かに特別秀でているわけでもありません。
それでも、「専門的な情報を理解することができる」
それだけでも、社会にとって価値があること、大切なことを広げる役割として、小さくてもできる一歩がある。
そう思わせてくれました。
こうやって記事を書くことも、もしかしたら誰かにとっての小さなプラスになることがあるのかもしれません。
まとめといいつつ全然まとめではありませんが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
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ゆうこりん

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私も実行委員として広報とスポンサー部門のお仕事をさせていただきました。
正直に言って、すっごく大変でした(笑)。